Digital Curation Lab - デジタル・キュレーション・ラボ

海外のデジタル・メディア・イノベーション、ソーシャルメディア・トレンドの中から「面白い」「これ大事」と思えることを共有してみたいと思います☺

小林弘人氏&柳瀬博一氏新著出版記念トークイベント参加備忘録

f:id:socialcompany:20150309220444j:plain

先日、小林弘人氏&柳瀬博一氏による新著『インターネットが普及したら、ぼくたちが原始人に戻っちゃったわけ』(晶文社)記念トークイベントに参加する機会を得ました。会場の雰囲気、トークイベントの内容、そしてそもそもの書籍それぞれがとても密度が濃い体験だったので忘れてしまう前に備忘録的に記録しておきたいと思います。


トークイベントの会場は下北沢にあるユニークな書店「B&B」。実は今回初訪問、以前から話題になってましたがこだわりのある本棚の様子、店内・トークイベントのゲストもビールが飲めるという斬新さ。毎日トークイベントなどが開催されていているとのこと、文化・アイディアの発信地という雰囲気で、お店に入るやいない素敵な空間の様子に魅了されました。

さて、本題の小林弘人さんと柳瀬博一さんの新著出版記念トークイベント。イベントの案内には以下のようにかかれていました。

小林弘人×柳瀬博一 「〈新・原始時代〉の歩き方」 『インターネットが普及したら、ぼくたちが原始人に戻っちゃったわけ』(晶文社)刊行記念 | Peatix

「ウェブやITが進化して、世界がフラットになったら人間の振る舞いは原始時代に戻った」そんな仮説のもとに、〈原始時代2.0〉におけるメディアの方法論、ビジネスモデル、ライフスタイルのあり方を説いた2人。 いままで常識・王道と思われていたことが、通用しなくなった時代に必要なのは、野生人の感覚と未来を編集する力。その双方を備えた2人が、メディア、ビジネス、組織論、ものづくりからサブカルまで、本書で言及しきれなかったさまざまなトピックについて全方位的に語る、ブレスト放談ライブ。

今回のイベントにどうしても参加したかったのは以下の写真右にある小林弘人さんによる『新世紀メディア論〜新聞・雑誌が死ぬ前に』を読み終えた時(今見たら読了日2009年9月14日と記載)に、「あぁきっとメディアは大きく変化する、誰もがメディアになりうる時代が来るんだろうなぁ」ということを強く認識したことがあり、今回の『インターネットが普及したら・・・』を読んで、その時を強く思い出したからです。

f:id:socialcompany:20150310160735j:plain

そもそも今回の本の内容は『ウェブとSNSの発達で世界が「150人の村」になったらビジネスは、社会はどうなる?』ということを第一線で活躍される編集者の目線で世の中の森羅万象について解説するような内容でした。あたかも居酒屋でお話しているような構成で分かりやすい事例や表現で描かれているのですが、今回のトークイベントはまさに本の中での会話を再現したような、ライブ感覚溢れる内容でした。

とっさにiPadを取り出し、気になったキーワードや本のタイトルなどをメモしていたのですが、インターネットが広まる前のアメリカヒッピー文化の話から最近の注目トレンドまで、新鮮な情報満載のひと時でした。とっさの一言で今まで一つの情報としてしか認識されてなかったものが点と点として繋がり、線に、そして面になっていくような知的興奮が楽しかったです。狭い会場スペースに60名程が小さなイス座る構成で、舞台を見に来たかなような密度の濃い空間でした。


ちょっと気になったキーワードを抜き書きしてみますね。

▶ダンパー数
人が維持できる人間関係の数の理論的上限は100~230人だとする「ダンバー数」という説。英国の人類学者ロビン・ダンバーが 定式化したもので、「それぞれと安定した関係を維持できる個体数の認知的上限」は平均約150人(100-230人)とされる。

自分自身のFacebookの活用の仕方を振り返り反省しつつ、既に自分のキャパシティを超えてしまっている村に自分がいることを再認識させられました。150人を超える方とFacebookで「お友達」のご縁を頂いている一方で、Facebook、Twitterなどを活用してない方とのコミュニケーションが疎遠になってないか、というのは古くて新しい課題です☺

▶スチュアート・ブラントさんとヒッピーカルチャー
1960年代に盛んだったヒッピー・カルチャーの中心人物で生物学をスタンフォード大学で学び、進化論をポール・エリックから叩きこまれた人物。そこから生まれた『ホール・アース・カタログ』という雑誌の編集者。『ホール・アース・カタログ』は、スティーブ・ジョブズをはじめ、たくさんの人々に強い影響を与えた有名な雑誌。
[オンライン・コミュニティのWELL]、[ケビン・ケリー]、[クルートレインマニフェスト]
[グレイトフル・デッド]などなどのインターネット創世記のお話はとても刺激的でした。

原始人化
[ブルーボトルコーヒー] [鎌倉・逗子・葉山のコミュニティ][Etsyなどのシェア経済][有機栽培・週末農業などのライフスタイルの変化][裸足ランニング]
日本ではまだ話題になってないものの、サプライチェーンや健康志向でサプライチェーンにも配慮しているメキシカンチェーン、「チップトール(Chiptole)」のことも思い出されて頷くことが多いお話が多かったです☺

▶150人程度のニッチな村を起点にしたコンテンツ、メディア、ビジネス

「マスメディアからニッチメディアへのシフト」的なことはよく言われていることだと思います。印象的だったのは、書籍の中で小林さんが指摘されている以下のような点です。

コミュニティを組成することまでがメディアの役割』(p.74)
どこからがPRで、どこからがメディアで、どこからが広告で、どこからが競争なのか、境界が消えてそこでは全部融合しているわけ』(p.76)

同時に今までのようにメディア自体のアンバンドル化が進んでいて、雑誌を初めから終わりまで読むというよりも、ある人が書いたある記事が面白ければその記事一本で数万人、数十万人にリーチする可能性を持っている世界が出現していることに改めて気付かされます。

例えば書籍の中で紹介されていた『30代独身OL』や『40代妻子持ち課長』というようなラベル付された属性に対し、今までは特定の雑誌(そして広告主)がこうした「層」にリーチするために役割を果たしていたのかもしれません(広告主は広告費を払っていた)。ただ今日では例えば様々なジャンルの記事が混在しているcakes(ケイクス)だったり、特定の「アイデンティ」を持つ属性グループ向けのリスト型記事・クイズで爆発的な人気を誇る「BuzzFeed (バズフィード)」のようなオンラインニュース・エンタメサイトがそんな役割を果たしているのではないかと思います。

ただ、コミュニティというのはそんなに簡単に出来るものではないのではないか、また今までの伝統的な社会のしくみ、或いは大企業、既存の教育システムで学び、働いていることでこうした新しいタイプのコミュニティを運営をするスキルは果たして身につくのだろうか・・・そんなことが対談を伺いながら頭の中でモヤモヤと浮かんできました。 


*コミュニティマネージャーに関して質問してみました
原始人化が進み、それぞれの小さな村単位でコミュニティが構成される際、村長さん自身がデジタルツールを駆使してコミュニティを運営、維持、心地良いものにする必要性がました際、村長さんが必ずしも[コミュニティマネージャー]としてのオンライン上のコミュニケーション作法、或いはリテラシー、スキルを身につけていないことで悩ましい事態になることがあるのではないか。そんなことを後半Q&Aセッションで質問させて頂きました。

テンプレート化されたスキルなどを学ぶニーズよりも、きっとそのような適正を持った人が組織の中、コミュニティの中から現れてくるのではないか、或いは、そのようなコミュニティマネージャーを育成するのはなかなか難しい、という指摘を頂きました。が、一方で、そのようなスキルや人材を提供するサービス・企業は必要とされるのではないか、という回答も頂きました。

現在有志の仲間で運営している「コミュニティマネージャーズ・コミュニティ」というFacebook上のコミュニティはそんな意味で実験的な取り組みで、まだ方程式や正解がない中で、実践的な事例共有の場として、或いは同じ課題・悩みを持って人同士のサポートし合えるようなコミュニティになれば、と思いを新たにしました。

以前から考えていたことではあるのですが、以下のようなサイクルをいかに効果的に創ることが出来るかがとても大事になってきているのではないか、と感じます☺

f:id:socialcompany:20150312150930p:plain

 まさにそんなテーマに関する米国Meetup海外事業責任者の方を囲むミートアップイベントを3/20に開催予定です。ちょっと宣伝も含めてリンクを。
 

ミートアップ With Meetup! | ニューヨーク発コミュニティプラットフォーム来日記念イベント開催(3/20) #Meetupjp | SocialCompany.org

という訳で、やや脱線してしまいましたが、ひとつのトークイベントに参加したことであらゆる事象に関するヒント、キーワードが溢れるように出てきて、またそれをトークイベントの中で丁寧に紡いでくださっているところが、編集のプロのお二人のなせる技であることを強く感じるひと時でした。メディア、広告、ビジネス、そしてこれからの社会、そして自分の周囲のコミュニティなどについて興味お持ちの方にとってはオススメの一冊だと思います。是非ご覧になってみてください☺

インターネットが普及したら、ぼくたちが原始人に戻っちゃったわけ

インターネットが普及したら、ぼくたちが原始人に戻っちゃったわけ

 

 

新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に

新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に